NPO法人の経営とガバナンス 信頼される組織運営
NPO法人の運営に携わっていると、「ガバナンス」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
しかし実際の現場では、「何となく理事会を開いているけれど、これでいいのだろうか」「ガバナンスって、結局何をすればいいの?」という声をよく聞きます。
NPO法人設立や運営の相談を受けている立場から、ガバナンスとは「組織の目的をぶらさず、誠実で透明な運営を続けるための仕組み」 だと考えています。
つまり、立派な理念を掲げるだけでは不十分で、実際にどう意思決定を行い、どう責任を果たすかという、NPO法人運営の実践力が問われているのだと思います。
NPO法人の経営とガバナンスはどう違うのか
まず、「マネジメント」と「ガバナンス」の違いを整理しておきたいと思います。
- マネジメント(経営):組織の目的達成のために、日々の事業を運営する中で
「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「時間」、「情報」といった経営資源を
効率的・効果的に活用する働きや仕組み
(「経営資源」とは、組織が事業を行う上で必要となる要素や能力の総称です。) - ガバナンス(統治、統制):公平でかたよりなく、明白で正しい判断や運営を行うための監督する仕組み
クルマの運転で例えてみると、経営が「クルマを走らせる」行為だとすれば、ガバナンスは「クルマのハンドルを握る」役割と表現できるかもしれません。
どれだけ事業が活発でも、方向を誤れば組織は迷走してしまいます。逆に、ガバナンスが機能していれば、多少のトラブルがあっても立て直しができます。
NPO法人におけるガバナンスの柱
ガバナンスを実現するために、特に重要なのは次の3つの柱だと考えられます。
理事会の機能強化
理事会は「形だけ開く場」ではなく、組織の意思決定と監督の中枢を担う機関です。
・決まった数人の理事だけが参加するなど、理事の出席率が低い。
・議決の前に十分な議論が行われていない。
・同じ人がすべてを決めていて、残りの人は承認するような形になっている。
このような状態では、ガバナンスが形骸化してしまいます。
年に数回の理事会では、いろいろな議題が挙げられると思います。そういった場合は、報告よりも議論を優先し、重視しましょう。
たとえば「次年度の事業方針」や「人事・会計方針」「リスク管理」など、理事が主体的に判断する議題を扱うことが望まれます。
行政書士の立場から見ても、議事録には「誰が、どんな意見を出し、どのように決定されたか」を残すことが信頼性につながります。
監事によるチェック機能
監事は、「会計経理を確認する人」と思われがちですが、実はそれだけではありません。
法令や定款、理事会の運営が適正かどうかも確認する、組織の良心のような役割があります。
理事会に出席し、必要な意見を述べることも可能です。
監事のチェックがあることで、外部から見ても「この団体は自浄作用がある」と評価されます。
情報公開と説明責任
NPO法人は、「市民からの信頼」で成り立つ組織です。
そのため、会計報告・事業報告・定款などの公開は法的義務であると同時に、ガバナンスの要です。
ウェブサイトなどで事業報告書を公開している団体は、寄付者や行政からの信頼が高まりやすくなります。
また、理事会での議論の概要を共有することも、透明性を高める良い方法です。
ガバナンス不全が起きる典型例
支援現場でよく見るトラブルのパターンを紹介します。
- 設立時に中心となった創設者のような人が、全権を握り続け、他の理事が意見を言えない
- 会計担当が一人で管理し、チェック機能が働いていない
- 理事会が開催されず、意思決定が事後報告になっている
- 法人と個人の資金の区別が曖昧になってしまっている。
これらはすべて、ガバナンスの欠如が原因です。
信頼を失うのは一瞬ですが、信頼を取り戻すには長い時間がかかります。
だからこそ、トラブルを未然に防ぐための仕組みづくりが大切です。
ガバナンスは、法令遵守+合意形成
ガバナンスの本質は「法令遵守」と「合意形成」にあると考えられます。
- 法令遵守(コンプライアンス):
会計処理や定款運営、役員選任などが法律に適っていること。 - 合意形成:
理事・会員・職員・地域など、多様な関係者が納得して前に進めること。
この2つのバランスを取ることで、ヤナギのように「しなやかで強いNPO」を育てます。
法律的には問題がなくても、内部で不信感や疎外感が生まれてしまえば、それはガバナンス不全です。
強いガバナンスを育てる5つの実践ポイント
- 理事の役割を明確にする
(理事は「名誉職」ではなく「責任者」であrことを自覚する。) - 理事会を定期的に開き、内容を記録しておく
- 監事と会計担当が連携して、不正やミスを防いでいく
- 会員や支援者への情報公開や説明責任を徹底する
- 会員やスタッフの意見を反映する仕組みを持つ
これらを地道に積み重ねることで、組織への信頼が確実に高まります。
ガバナンスは信頼を育てる経営力
NPO法人の存在意義は、「社会に信頼される活動」を行うことにあります。
その信頼を支えるのが、経営とガバナンスです。
ガバナンスは、理事会や監事だけの仕事ではありません。
スタッフやボランティア、会員一人ひとりが「自分たちの法人をどう守り、育てるか」を意識することが、持続可能な組織運営の第一歩です。
「誠実で透明な組織ほど、長く続く」
制度としてのルールを整えるだけでなく、信頼を大切にする文化を育てること
それこそが、NPO経営とガバナンスの核心だと思います。


