NPO法人の「内規」 信頼される組織運営に必要なこと
NPO法人の相談を受けていると、よく聞かれる質問があります。
「うちは小規模だし、定款があれば、内規なんていらないですよね?」
実は、この“内規(内部規程)”こそが、トラブルを防ぎ、法人運営をスムーズにするための大切なツールなのです。
今回は、NPO法人における内規の役割や作り方、整備のポイントをわかりやすく解説します。
「内規」とは何か? 定款との違い
まず整理しておきたいのは、「定款」と「内規」の違いです。
定款は、NPO法に基づく「法人の基本ルール」であり、設立認証時に所轄庁へ提出します。いわば、「憲法」のような存在です。
「内規(内部規程)」は、日常の運営を円滑にするために法人が自主的に定める「細則」です。例えば次のようなものがあります。
- 会計処理の基準や承認手順を定めた「会計規程」
- 理事会の運営方法や決議要件などを定めた「理事会規程」
- 社員総会を円滑かつ適切に運営するための「社員総会規程」
- 役員の報酬及び費用弁償に.関する事項等を定めた「役員報酬規程」
- 会員の会費や入退会に関する事項などを定めた「会員規程」
- 個人情報の取扱いを定めた「個人情報保護規程」
- ハラスメント防止、コンプライアンス等の倫理に関する規程
などが挙げられます。
労働基準法に定められている、労働条件(労働時間、賃金など)や職場規律を定めた「就業規則」も内規の一つです。
定款は所轄庁に届け出る必要がありますが、内規は法人内部で定めるだけで効力を持ちます。
つまり、現場運営の「マニュアル」としての役割を果たすのが内規なのです。
なぜ内規が必要なのか 法人の大小には関係ない
NPO法人は、理念や人のつながりで動く組織です。
だからこそ、「言った・言わない」、「慣例だから」というあいまいさがトラブルのもとになります。
特に、職員やボランティアが増えてくると、意思決定や情報共有が複雑になりやすいものです。
相談案件の中で、次のようなケースでは内規が整備されていないことが原因でした。
- 理事会の議事録作成や保管ルールがあいまいで、補助金審査で指摘された
- 会計処理の基準が統一されておらず、監査対応に時間がかかった
- スタッフの勤務時間や休暇ルールを巡ってトラブルになった
- 個人情報管理のルールがなく、利用者情報の取り扱いに問題が生じた
こうした事例を見ると、「うちは規模が小さいから」という理由でルールを後回しにすることが、かえって負担やリスクを大きくしてしまうことがわかります。
小さな法人こそ、内規が「守りの仕組み」になるのです。
どんな内規から整備すればいい?
組織の実態に合わせて複数の内規を整備するのが望ましいですが、まずは次の3つから始めるのがおすすめです。
・個人情報保護規程
個人情報を取り扱う事業者が、個人情報保護法に基づき、個人情報の漏洩などを防ぐために、取得、利用、保管、提供、削除など各段階の具体的な取り扱い方法や責任者を定めておきます。
・会計処理規程
補助金や寄付金を扱うNPO法人では、資金の使途を明確に示すことが信頼の鍵です。
支出承認のフローや経費の区分(事業費・管理費など)を、内規で定めておくと安心です。
・理事会規程・総会運営規程
大まかなことは定款に定められていますが、開催通知の方法、議事録の作成・承認方法などを明文化しておくと、後から手続き面での誤解が防ぐことができます。
・役員報酬規程
役員報酬を支払う役員がいる場合、定めておくのが望ましい規程です。
内規を作るときのポイント
・定款や法令との整合性を確認する
内規は定款を補うものです。内容が矛盾していると無効となる可能性もあります。
・現場の実態に即した内容にする
実際に運用できない内規は「絵に描いた餅」になってしまいます。現場スタッフや理事の意見を取り入れて作成することが大切です。
・制定・改定の手続きを明確にする
「理事会決議によって制定・改定する」など、手続きルールも内規内に明記します。
後日改定するときに混乱しないようにしておきましょう。
・定期的な見直しをする
事業の変化や法改正に合わせて、少なくとも年1回は見直しをするのが好ましいです。
特に個人情報保護法や労働関連法令は、改正が頻繁なため、注意が必要です。
「見える化=明文化」が信頼につながる
多くの法人を支援してきて感じるのは、「書面で法人内のルールを見える化している法人は強い」ということです。
法人内のもめごとの多くは、運営にあいまいな部分があり、人によって認識が異なっていることです。
また、委託事業の選定の場や、補助金の審査などでも、文字化しているかどうかがが信頼の評価基準にもなります。
NPO法人は、自らガバナンスをつくり上げる必要があります。
内規の整備は、その第一歩でもあります。誰が読んでも、運営の仕組みがわかる状態をつくることで、法人の透明性と持続性が高まります。
ルールは「縛る」ためではなく、「守る」ためにあるもの
内規は、メンバーを縛るためのものではありません。
むしろ、安心して活動するための「共通言語」です。
明文化されたルールがあることで、誰が運営しても組織がゆるがず、活動の理念が継続されていきます。
「人の想い」で成り立つNPOだからこそ、「仕組み」で支えることが必要です。
内規を整えることは、法人をより信頼される存在に育てるための、確かな一歩なのです。
内規の策定などに関するご相談は、メールでお気軽にお尋ねください。


