利用会員は定款に必要?地域のサッカークラブをNPO法人にする前に知ってほしい「会員」の話 

地域で小中学校生のサッカー教室を続けてきたグループが、「そろそろNPO法人にしようか」と考え始めるとき、私は行政書士として、よく同じ相談を受けます。

「今いる利用者さんも会員なので、定款には正会員・賛助会員のほかに、利用会員も入れたほうがいいですよね?」

この質問、実はとても多いです。
そして多くの場合、ここにはNPO法人の『会員』についての誤解があります。

今回は、地域でこどもにサッカーを教えているサッカークラブを例にしながら、NPO法人の会員について、できるだけ分かりやすくお話しします。

そもそも「会員」という言葉がややこしい

ダンスグループやサッカー教室などのクラブ、地域で活動をしているボランティアグループでは、

  • 定期的に活動に参加している人
  • 月謝を払って通っている人

こうした人たちを、自然に「会員」と呼んできたと思います。

任意団体では、
会員=参加者・利用者
という意味で使っても、まったく問題ありません。

ところが、NPO法人になると、この「会員」という言葉の意味がガラッと変わります。

NPO法人の会員は「運営側の人」

NPO法人の会員は、法律上、法人をつくっている人という位置づけになります。

行政書士として法人化を支援するとき、私はこう説明しています。
NPO法人の会員(正会員)とは、

  • 総会に出る人
  • 団体の大事なことを決める人
  • 理事を選ぶ人
  • 団体の方向性に責任を持つ人

積極的に運営に参画している人、簡単に言うと、「運営側のメンバー」です。

会社で言えば株主、マンションで言えば管理組合の組合員、そんなイメージに近いです。


利用しているこどもたちは、その役割?

ここで、少し考えてみましょう。

サッカークラブの教室に通っているこどもたちや保護者に、

  • 毎年度の団体の決算を承認するかどうか
  • 団体を解散するかどうか
  • 定款を変えるかどうか
  • 理事を誰にするか

こうしたことを決めてもらう場面を、想像しているでしょうか?

多くの方が、「いや、それは想定していない」と答えると思います。

それならば、そのこどもたちや保護者は、NPO法人の会員(正会員)ではないのです。

利用会員は「サービスを受ける立場」

サッカークラブの教室に通っているこどもたちや保護者は、

  • 指導を受ける
  • プログラムに参加する
  • 安全に配慮した運営を期待する

という、利用者の立場にあります。

これはとても大切な存在ですが、運営の責任を負う立場ではありません

NPO法人では、

  • 会員(運営側)
  • 利用者(サービスを受ける側)

この2つを、はっきり分けて考えます。

「利用会員を定款に入れたい」と思う理由

では、なぜ「利用会員も定款に入れたほうがいい」と感じてしまうのでしょうか?

理由はシンプルだと思います。

今まで「会員」と呼んできたから

任意団体の感覚のまま、NPO法人の制度を考えようとすると、言葉のズレが起きます。

このズレを整理しないまま定款を作ると、あとで運営がとても大変になります。


正会員と賛助会員だけで足りることが多い

NPO法人の定款では、多くの場合、

  • 正会員:団体の運営を担う人
  • 賛助会員:活動を応援する人

この2種類で十分だと思います。

ここで大事なのは、正会員の人数を増やすことではありません

  • 責任を持って、法人の運営について判断できる人か
  • 継続的に関わってもらえる人か


NPO法人は、法律上、10人以上の正会員が必要ですが、
これを基準に、正会員になってもらうことが大切です。


利用者は、別のルールで守ればいい

「じゃあ、利用している人たちはどう扱うの?」という質問も、よく受けます。

答えはシンプルで、

  • 利用のルール
  • 参加申込書
  • 月謝や参加費のルール

を利用規約や会員規程などの内規で定め、利用者として整理すれば十分だと思います。

利用している人たちが、運営にも関わりたいと申し込みがあれば、正会員としても迎え入れましょう。

NPO法人の会員(正会員)に、未成年者がなることは法律上可能です。
総会での議決権行使など、法律行為を伴う場合は、民法の規定により法定代理人(親権者)の同意が必須となります。

しかし、無理にNPO法人の会員にしなくても、活動は問題なく続けられると思います。

呼び方も、「メンバー」と変えたり、「活動会員」「利用会員」など、明確に区別できるような呼び名にし、
使うときも「会員」と略さないように注意するのがいいと思います。


NPO法人化は「活動を守るための整理」

NPO法人になるというのは、活動を堅苦しくすることではありません。

  • 誰が決めるのか
  • 誰が責任を持つのか
  • 利用者とはどういう関係か

これらををはっきりさせて、活動を長く続けるための土台をつくることです。


最後に:会員を整理することは、仲間を減らすことではない

「会員を整理する」と聞くと、「仲間を切り分けるようで不安」と感じる方もいます。

しかし、実際は逆だと思います。

  • 運営に責任を持つ人
  • 活動を利用する人
  • 応援してくれる人

それぞれの立場をはっきりさせることで、無理のない、続けやすい組織になります。

NPO法人の会員とは何か。

それを理解することが、大切な活動を守る第一歩です。

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