NPO法人の「事業報告書」の作成 ただの義務で終わらせていませんか?~信頼をつくる報告のコツ~

NPO法人の運営相談を受けていると、必ず聞く質問があります。
「事業報告書って、どこまで詳しく書けばいいんですか?」
「所轄庁に提出するだけでいいんですよね?」

「今年度は事業を行っていないから、事業報告書は出さなくていいんですよね?」

確かに、NPO法では毎事業年度終了後3か月以内「事業報告書等」を所轄庁に提出することが義務づけられています(NPO法第29条)。
けれども、事業報告書は単なる「提出書類」ではありません。
実は、法人の信頼度を大きく左右する「顔」なのです。

今回は、NPO法人に関する業務を得意とする行政書士の立場から、事業報告書の意義と作成のポイントを、わかりやすくお伝えします。

「事業報告書」はNPOの“活動の証明書”

NPO法人が、事業年度終了後に作成し、所轄庁に提出すべき書類は、以下の7点が基本です。

  1. 事業報告書
  2. 活動計算書
  3. 計算書類の注記(忘れがちな提出書類の一つです)
  4. 貸借対照表
  5. 財産目録
  6. 年間役員名簿
  7. 事業年度末日時点の社員名簿(10人以上)

これらをまとめて「事業報告書等」と呼び、毎年度、所轄庁に提出します。提出された書類は一般に公開され、誰でも閲覧できる仕組みになっています。
つまり、寄付者などの支援者、助成金団体や行政機関、活動者やサービス利用者を含め、誰でもが見ることができる、法人の信頼性を判断する“公開情報”でもあるのです。
この公開性は、日本のNPO法人制度の特徴でもあります。

なぜ事業報告書の書き方で印象が変わるのか?

NPO支援者として、たくさんのNPO法人の事業報告書を検索し、読む機会がたくさんあります。
そうすると、NPO法人の事業報告書には大きく2つのタイプがあることが分かります。

  • NPO法人の義務として、最低限の活動実績を記載だけをしている報告書
  • 読み手(支援者・行政・一般市民)に活動の成果を伝えようとしている報告書

このふたつには、同じ活動内容でも圧倒的に読んだときに与える印象に違いがあります。
「数字や実績」だけでなく、「なぜこの活動を行ったのか」、「どんな変化が生まれたのか」を加えるだけで、読む人の理解と共感を得られるのです。

この「共感を得る」ことは、NPO法人にとって支援を得るための重要なポイントです。

所轄庁が提供している様式で作成する場合でも、少しでも書き加えることにより説得力が増します。

NPO支援者が勧める「事業報告書」作成の3ステップ

活動の“目的”から書き出す

最初に、その年度の、法人の設立目的に基づいたその年度の重点テーマを整理しましょう。

その年度は、「誰に」、「どんな課題に対して」、「どのような方法で」取り組んだのかを一文で表せると、全体がまとま  ります。

例:「地域の高齢者が孤立しないよう、居場所づくりと生活支援を中心に活動した。」

事業の成果にこの一文があるだけで、事業報告書全体に一貫性が生まれます。

事業ごとの「成果」と「課題」を整理

事業報告書は、単なる実績報告ではなく、次年度に向けた改善にもつながる資料です。

読み手から見ると、「実施内容+成果+課題」をワンセットで記載していると非常にわかりやすくなります。

例:「○○講座を年間12回開催し、延べ参加者は250名であった。参加者のアンケートでは「地域のつながりを感じた」との声が多数あった。一方で、若年層の参加が少なく、今後はSNSの活用など、広報方法を検討することとする。」

具体的な数字、参加者の声、今後の課題がそろうことで、事業報告としての説得力が増します。

財務資料と「ストーリー」をつなぐ

会計資料(活動計算書・貸借対照表など)と、事業報告の内容をつなげて説明するのが上級ポイントです。

たとえば「寄付金○万円を活用して、○○事業を実施」など、お金の使われ方が見える報告は信頼性を高めます。

寄付者・助成金団体への説明にもそのまま活用できます。

そのためにも、「計算書類の注記」を作成し、事業別損益の状況もまとめておくことも大切です。

事業報告書を「伝える資料」にするコツ

  • 写真やグラフを活用
    ニュースレターのように、活動の様子や実績をビジュアルで示すと、より伝わりやすくなります。
    所轄庁に提出する事業報告書は文章のみで作成し、写真などを取り入れたビジュアル版事業報告を別途作成することをお勧めします。
    ビジュアル版は寄付のお礼として寄付者に届けたり、法人のホームページなどで公開しましょう。
  • 記載内容の構成を整える
    「事業の概要」「成果」「課題」「次年度の方針」など、一定の構成で毎年度まとめると、読み手も比較しやすくなります。
  • 法人内での振り返りにも活用する
    事業報告書の内容は、理事会で議論し、次年度の計画づくりに生かすと、単なる提出物から「成長のツール」に変わります。
    振り返りには、スタッフや活動者の意見も取り入れていきましょう。

行政書士から見た事業報告書提出に関するよくあるミス

  • 提出期限の遅れ
    事業年度終了後3か月以内に、所轄庁への提出が必要です。遅れると、提出未実施法人とされ、助成金申請に影響する場合もあります。
    まったく活動をしていない年度であっても、提出する義務があります。
  • 数値の不一致
    活動計算書の支出金額と事業報告書の記載内容が一致していない報告書が見られます。理事会や社員総会に議案として提出する前に、確認を忘れずに行いましょう。
  • 定款上の事業とのズレ
    実施した事業が、定款の事業の項目に記載のない「目的外事業」になっていないか確認しましょう。所轄庁に提出する報告書では、特に注意が必要です。定款に記載のない事業を実施していくのであれば、計画時点で定款変更を検討しましょう。
  1. 役員変更届の未提出
     事業報告と合わせて役員の変更も反映することを忘れがちです。

支援者の立場から見た「いい報告書」とは

NPOの支援者や寄付者は、実績である数字以上に「活動の意味」を知りたいと考えています。この点は、売上高や収益などの実績を求められる営利企業の活動に対する思いとは異なる点だと思います。

だからこそ、NPO法人の事業報告書にはストーリー性と透明性が求められます。

また、行政書士・NPO支援者として感じるのは、報告書の丁寧さはそのまま法人の信頼度に直結するということです。事業報告書を読めば、その法人の活動の姿勢がわかると言っても過言ではありません。

NPO法人の義務を超えて、「信頼を積み重ねる報告」へ

事業報告書は、所轄庁に提出するためだけの書類ではありません。
それは、あなたの法人がどんな想いで、どんな社会課題に取り組み、どんな成果を出したかを、広く社会に伝えるメッセージでもあります。
事業報告の書類を整えることは、信頼を築く第一歩です。そして、その報告が次の支援や協力を呼び込み、活動を持続させる力になります。

「事業報告書づくりは、NPO法人の未来をつくる作業」――そう考えると、少し気持ちが変わってきませんか?

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