「NPO法人をつくりたい」と思ったときに知っておきたいこと NPO支援者が伝える、設立のリアルと準備のコツ
「自分たちで何か社会の役に立つ活動をしたい」
「地域の課題を解決する仕組みをつくりたい」
そんな想いから「NPO法人を立ち上げたい」と考える方は年々増えています。
けれども、いざ設立を考え始めると、「何から始めればいいのか分からない」「法人にしたほうがいいのか迷っている」という声も多く聞かれます。
今回は、NPO支援を得意とする行政書士の視点から、NPO法人設立の基本と、実際に取り組むときのポイントを分かりやすくお伝えします。
NPO法人とは? 目的と特徴を整理しよう
特定非営利活動法人(NPO法人)とは、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得した法人です。
NPO法人は、「営利を目的とせず、特定の社会的課題の解決を目的とする団体」に法人格を与える制度です。
個人の有志グループや任意団体でも活動はできますが、法人化することで信頼性や契約のしやすさが格段に上がります。 法人になると、法人の名の下に取引等を行うことができるようになり、銀行口座の開設、補助金や委託事業への応募、事業契約の締結などが可能になります。
NPO法人は「公益性」と「透明性」を求められる組織
NPO法人の特徴として、以下のようなものが挙げられます。(他にもあります)
- 非営利・公益性
利益を目的とせず、特定の非営利活動を行う団体です。
収益活動は行えます。活動で得た利益は、設立者や構成員に分配されず、団体自身の活動資金に充てられます。
- 社会貢献活動
福祉の増進、子どもの健全育成、環境保全、社会教育、人権など、社会的な課題解決を目的とした活動を行います。 - 情報公開義務
NPO法人制度は、自主的な法人運営を尊重し、情報開示を通じて市民の選択や市民の監視を前提とした制度です。
毎事業年度ごとに、年度の初め3カ月以内に事業報告書などを作成し、事務所に備え置き、誰でも閲覧できるようにする必要があります。
毎事業年度に1回、事業報告書などを所轄庁に提出する必要があります。
- 設立
NPO法人の認証権及び監督権を持つ行政機関(都道府県や政令指定都市)の認証を受けてから、登記をします
設立までに最低3か月以上かかり、書類準備などの手間はあります。
株式会社のような定款認証や登記にかかる費用が不要なため、設立費用を抑えられます。
設立時に10人以上の社員(=会員)が必要です。 - 税制
特定非営利活動による所得には法人税がかかりませんが、収益事業による所得には課税されます。
法人住民税の均等割は、活動内容にかかわらず原則として課税されますが、自治体によっては収益事業を行わない場合には減免されることがあります。 - 雇用
職員やスタッフを雇用することができます。ボランティアとは異なり、スタッフに給与を支払うことができます。
ざっくりとした設立までの流れ
設立の基本的な流れは以下のとおりです。期間の目安は約4〜6か月です。専門家の力を借りると期間も早くスムーズに進みます。
- 仲間を集め、活動の理念と事業の内容を整理する
少なくとも10人以上の賛同者(社員)が必要です。
よく話し合い、何の課題を解決したいのか、どんな事業で社会に貢献するのかを明確にします。 - 設立書類を作成する
・定款(ていかん)を作成する
定款は、法人の基本ルールを定める最重要書類です。
目的や事業内容、役員の構成、会計、解散などを定めます。
行政書士がサポートすることも多い部分です。
・設立趣旨書を作成する
社会課題の現状を具体的に示しながら、その解決に向かってなぜNPO法人として活動す るのか、どのような事業を行うのかを説明する書類です。
設立発起人だけで書くのではなく、法人設立に賛同したみんなの想いを集めながら作成しましょう。
・2年分の事業計画を作成する
定款や活動予算書と内容に矛盾がないように、収入と支出の見込み額を具体的に書きます。
NPO支援者から見ると、申請書類を作る中で、多くの方が苦労されています。 - 設立総会の開催
定款を承認し、理事・監事を選任します。議事録を作成し、後に提出します。 - 所轄庁への申請(認証手続)
必要書類をまとめて提出し、事前審査で内容に不備があると差し戻され、何回も書類のやりとりをしなければならなくなるので、丁寧な準備が大切です。
受理された後、縦覧期間は2週間、審査期間は通常2か月程度です。 - 登記申請
認証書を受け取ったら、2週間以内に法務局で登記します。
登記が完了した日が「法人設立日」となります。
設立準備で大切にしたいこと
多くの設立サポートをしてきた経験から言えるのは、書類づくりよりも前に、想いの整理が鍵ということです。
法人設立から1年もたたないうちに、仲間割れや活動の見通しが立たず、解散したいというケースも相談を受けたことがあります。
次の3つを意識して準備すると、設立後の運営が格段にスムーズになります。
① 「なぜ法人化するのか」を言語化し、共有する
グループ活動の延長ではなく、法人にする目的を明確にしましょう。
法人化の理由を具体的にすることで、定款づくりもぶれません。
② 「誰と運営するか」を早めに決める
理事や監事は、信頼できる人だけでなく「事業運営に関心を持ち、責任を果たせる人」を 選ぶことが大切です。
役員に選ばれた人は、その役割を理解しておく必要もあります。
NPO支援者として見ていると、設立後にトラブルが起きる多くのケースでは、理事間のコ ミュニケーション不足で、意思の疎通ができていないといった問題が見られます。
③ 「お金の見通し」を立てる
NPO法人は、事業に資金が必要です。会費、寄付、補助金、自主事業収入など、収入源の バランスを考えておくことが重要です。
「NPO法人を設立すれば、自然と寄付や補助金助成金が入ってくる」と思っている方がとても多いのが現状です。
設立初年度は赤字でも構わないと思いますが、持続可能な仕組みをどうつくるかを考えることが、信頼される法人運営につながります。
赤字続きの事業計画では、設立の認証がおりないケースもみられます。
よくある誤解と注意点
- 「NPO法人=非営利=収入を得てはいけない」ではない
収益を上げても構いません。株式会社が株主に配当と言う形で分配するように、その利益を個人に分配してはいけないというルールです。事業の継続に必要な費用として再投資します。 - 「NPO法人設立がゴール」ではない
むしろ大切なのは設立後です。事業報告の作成の義務や税金の支払いなど、継続的な運営体制を整える必要があります。
思いを「形」にし、活動につなげていく
NPO支援者として感じているのは、NPO法人の設立は「手続き」であると同時に、「思いを見える化するプロセス」だということです。
定款を書く中で、「自分たちの活動の軸」が見えてくる。
役員構成を考える中で、「仲間との信頼関係」が深まる。
それが、NPO法人化の本当の価値だと思います。
特定非営利活動法人制度を知り、手続きをきちんと踏めば、NPO法人の設立は誰にでもできます。
しかし、大切なのは、「なぜ」「誰のために」「どうやって」社会を良くしていくのかということで、その軸を明確にしておくことだと思います。
そうすると、たくさんの応援者が現れてきます。
「設立」はスタートライン
NPO法人の設立は、目的ではなく「始まり」です。
社会の課題を解決したいという思いを、NPO法人という継続的な仕組みとして動かすためのスタートラインでに立つということだと思います。
焦らず、仲間と語り合いながら、少しずつ形にしていきましょう。
その一歩が、社会を変え、誰かの暮らしを変える小さなきっかけになるかもしれません。
NPO法人の申請のためには、10種類程度の書類を作成します。様式も自治体ごとに違うため、専門家のサポートを受けるとスムーズです。
NPO法人設立について、アドバイスや書類作成のお手伝いが必要な方は、メールでお気軽に問い合わせください。


