「NPOってなんとなくうさんくさい」NPO支援者が考えた、そう感じてしまう理由や誤解と、うさんくさくない本当の姿

「NPOって、なんとなくうさんくさい」

そういう声を、私はこれまで何度も聞いてきました。
NPOでボランティアをしていたり、働いている知り合いがいなかったら、そのように思ってしまう気持ちも分かります。
NPO支援者でも、「絶対にうさんくさくない!」と言い切れない部分もあったり…

NPOという組織は、企業でも行政でもなく、両者の「あいだ」のような存在です。
活動の姿が外からは見えにくく、NPO法人制度の理解も十分に広まっていません。
そして何より、「善意」を軸にしているからこそ、逆に信じきれない気持ちも起こりやすいのだと思います。

NPOの活動は、多くの人の善意に支えられ、行政(原資は税金)や助成基金からの補助金助成金、個人の寄付金などを資金としています。
よく知らない組織が、税金や善意のお金を扱う…その時に警戒心が働くのは、むしろ自然なことかもしれません。

この記事では、なぜNPOはうさんくさく見えやすいのか ということを考えるとともに、実際にはうさんくさくないNPOの姿について、NPO支援者である行政書士の立場から、わたしなりに整理してお伝えしてみたいと思います。

この記事での「NPO」は、公益的な地域活動を行っている団体・グループやNPO法人を指すと思って読んでください。

なぜNPOは「うさんくさく」見えるのか?

情報が少なくて、姿が見えない

企業であれば、商品やサービスがあり、売上や働いている従業員の姿がイメージできます。
一方でNPOは、活動内容も活動しているボランティアやメンバーの顔も外から見えにくいことが多く、

「何をしている団体なのか」
「誰が運営しているのか」

が分かりにくい状況になっています。
この見えにくさが、不信感を生んでしまいます。

また、NPOは活動することに忙しく、広報に費やせるパワーが圧倒的に足りていないと感じます。

「人手がいない」
「広報に詳しい人がいない」
「日々の活動で手いっぱいなので、広報に手が回らない」

この状況が多くの団体に共通していて、結果として外からは、何をやっているのか分からない謎の団体に見えてしまいがちです。

「善意」が前提だからこそ、逆に疑ってしまう

NPOの大きな特徴は、「非営利」「営利を目的としない」ことです。
これは、構成員に利益を分配しないということで、有料・有償の事業を行ってはいけないという意味ではありません。
しかし、受け取る利益は次の事業に使えるので多いにこしたことはありませんが、その拡大を目的とはしていません。

これは素晴らしい理念ですが、現実の社会では
「タダで働くなんて怪しい」
「キレイごとに聞こえる」
「裏で何か得しているんじゃないの?」
と疑われやすい土壌もあります。

NPO側も、理念を掲げることで安心してしまい、「私たちの活動は良いことだから理解してもらえるはず」という前提で動いてしまうことがあります。

しかし、社会には多様な価値観があり、「いいこと」は説明しなければ伝わりません。情報提供や説明が不足していては、悪意がなくても疑念を生みだしてしまいます。

お金の流れが分かりにくい

補助金助成金、委託金、寄付金、会費など、NPOの資金源は多様で、外部の人には分かりにくいお金の流れになっています。
さらに、NPOには株式会社のように「株式」がなく、利益を配当する仕組みもありません。
この構造が一般の人にはイメージしにくく、

「どこから収入があるの?」
「お金はどう使っているの?」
「透明性はあるの?」

と疑われがちです。

メディアで、「怪しいNPO」が大きく取り上げられる

支援をしている現場では、真面目なNPOが圧倒的多数であることを、実際に日々見ています。

現在、法人格があるNPO法人は全国に5万団体くらいありますが、そのほとんどは真面目に地域を支え、社会問題の解決に取り組んでいます。

しかし、ごく一部の不適切な団体やNPO法人のニュースが大きく報道されるせいで、「NPO全体がそうなのでは?」という印象を持たせてしまっています。

ごく一部のNPOの不祥事が、まるでNPO全体の問題のように扱われてしまっています。

プロっぽくない雰囲気で運営されている

良くも悪くも、NPOは人材不足で、一人一人がいろいろな担当を担っています。


専門家にお願いする資金も不足がちなため、ホームページやパンフレットなどの広報媒体のデザインや、プレゼンテーション資料の作成も、団体の中で多少できる人が作成することも多く、そのため素人っぽくなりがちです。


そのため、内容は真剣でも、見た目が整っていなかったり、一昔前のデザインのままだったりして、不安感を与えてしまっていることもあります。

まじめに取り組む小さな団体ほど、不必要に警戒されてしまうということもあります。


では、本当にNPOはうさんくさいのか?

もちろん、どんな世界にも一定数の問題団体はあります。

しかし、制度としてのNPOはむしろ透明性と責任を強く求められる存在です。

「所轄庁」への報告義務がある

NPO法人は、毎年「事業報告書」「計算書類」を行政(所轄庁である都道府県や政令指定都市など)に提出しなくてはなりません。
これは、企業にはない義務です。
提出しないと行政処分の対象になります。

お金の使い道は公開が原則

NPO法人は、事業の内容や会計を公開する義務があります。
つまり、何にお金を使ったかを、後で誰でも確認できます。

役員報酬にもルールがある

NPO法人では、法人の財産を個人がもらうことは禁止されています。
役員報酬も、客観的に妥当である必要があります。

解散しても財産は個人に戻らない

株式会社は解散すると株主へ財産を分配できますが、
NPO法人は、他の公益的な法人へ財産を引き継がなければなりません。
この仕組みが、個人の利益目的でのNPO法人を作りにくくしています。

■ ほとんどのNPOは地域で地道に活動している

学童保育、高齢者支援、障害福祉、子どもの学習支援、文化活動、まちづくり…
比較的小さな規模でありながら、地域ではなくてはならない存在になっている団体が多数あります。
表には出づらいだけで、真面目に働くスタッフやボランティアが地域を支えています。


「うさんくさい」と思っても、一歩だけでも近づいて見てみてほしい

私は、「NPOを疑う気持ち」は健全だと思います。
疑問を持つことは、結果として社会の透明性を高めるからです。

ただ、同時にこうも思います。

見えない部分が多いだけで、NPOの価値まで否定する必要はない

もし興味がある団体があれば、次のポイントを1つだけでも確認してみてみることをお勧めします。

・年次の活動報告書を作成しているか
・会計が透明か
・代表者や活動内容が、見える形で発信されているか
・事務所や連絡先が明確か

これらが揃っていれば、基本的には信頼性が高い団体と思ってもいいと思います。


最後に:文脈を知ると、NPOの見え方は変わる

「NPOがうさんくさい」という言葉には、よく知らないものに対する不安が含まれています。

そして、その不安は、NPOが何を大切にして活動しているのかというミッションやパッションを知るだけでも、大きく変わります。

NPOの多くは、「地域に必要なものを、誰もやらないなら自分たちでやろう」という思いから始まります。


困っている人がいて、手が足りなくて、声を上げる人がいない。
その隙間を埋めてきたのが、地域のNPOです。

うさんくさく見えることもあるけれど、その裏側には、社会を支える多くの熱意や誠実さがあります。

もし機会があれば、ぜひあなたの地域のNPOの活動とともにその活動の背景をのぞいてみてください。
きっと、思っていたよりもずっと、丁寧で温かい世界が広がっているはずです。

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